そのため、不動産をお持ちの方は「身内同士で遺産相続の揉め事が起こらないか?」「相続税の支払いはいったいどれくらいになるのか?」などと心配されている方も多いでしょう。
でも、ご安心ください。相続税の支払いについては、国税庁のホームページに相続税の申告要否判定コーナーが用意されています。こちらを使えば、相続税の申告が必要かどうか、どの程度の相続税の支払いが必要かを判定することができます。
ただし、実際の画面を見ていただくと・・・・・・
相続財産の土地等や建物については、専門用語も多く、具体的にどうやって入力すれば良いのか、なかなか初めての方にはわかりづらいものです。
そこで今回は、遺産相続や相続税と不動産の関係について
・相続税の計算の仕組みはどうなっているのか?
・不動産にはどのくらい相続税がかかるのか?
・その他注意すべき点はなにか?
などなど、国税庁のホームページで不動産の相続税を算出するにあたって、何をどこに入力すれば良いのかを判断できるように、相続税の考え方や専門用語を噛み砕きながら説明していきます。
まずは「相続税」の基本的な仕組みを理解しよう
遺産総額が「基礎控除以下」なら相続税はかからない
亡くなった方(被相続人と言います)が所有していた財産を「遺産」と言い、その遺産を家族のような遺族が引き継ぐことを「遺産相続」といいます。
財産は、必ずしも現金や不動産など「プラスの財産」(資産といいます)だけではありません。他人からの借入金といった「マイナスの財産」(債務といいます)もあります。
遺産相続をすると、このプラスの財産を引き継ぐ代わりに、マイナスの財産も同時に引き継がなくてはなりません。
そのため、相続税についても、被相続人が遺したプラスの財産から、マイナスの財産を差し引いた金額を基礎として相続税額を計算します。
この、被相続人が遺したプラスの財産から、マイナスの財産を差し引いた金額を「遺産総額」といい、遺産総額が「一定額」以上になると相続税の納税をしなくてはなりません。
そして、この一定額のことを「基礎控除」と言い、遺産総額から基礎控除の額を差し引いた金額を「課税遺産総額」と言います。
この、「課税遺産総額」が相続税の対象となる金額ということです。
遺産総額−基礎控除=「課税遺産総額」※
※この課税遺産総額がプラスの場合、税金がかかる
基礎控除の金額は、法的に遺産を受け取る権利のある人の人数により異なります。この遺産を受け取る権利のある人を「法定相続人」といいます。
具体的に言うと基礎控除の金額は、次のように計算されます。
たとえば、夫が亡くなり、その妻と2人の子供が法定相続人である場合、法定相続人は合わせて3人となります。ですから3,000万円+600万円×3=4,800万円が基礎控除の金額となるわけです。
遺産総額からこの基礎控除を差し引いた金額が、相続税の対象となる「課税遺産総額」ですので、課税遺産総額が0円以下、つまり基礎控除以下の遺産総額しかなければ相続税を納める必要はありません。
実は、平成27年以降に発生した相続について、それまでの基礎控除額、つまり税金を払わなくていい金額が、以前の6割に減額されました。
そのときは「誰もが相続税の対象になり得る”一億総相続税時代”がやってくる」などと騒がれましたが…
実際は、基礎控除以外にも各種の非課税枠や軽減措置があり、改正後であっても実際に相続税の納税義務があるのは相続する人全体の8%程度しかいないと言われているのです。
相続税の対象者が2倍近くになったといっても、元々全体の4%だったものが8%になったということであり、残りの92%の人はあいかわらず相続税には無関係なのです。
しかし、今までなら相続税の対象ではなかったのに、新たに相続税の対象となる方もいますし、元々相続税の対象であった方は、今まで以上に相続税の負担が重くなることは間違いありません。
多額の不動産をお持ちの方にとって、相続税は大きな問題であることでしょう。
相続税額は2段階で計算がされる
遺産総額(「資産」ー「債務」の金額)が基礎控除を上回る場合、相続税を納める必要があります。
この相続税の金額の計算は、大きく2つのステップで行われます。
(ステップ1)相続税の総額
まずは「相続税の総額」を計算します。
これは、亡くなった方(被相続人)が遺した遺産全体にかかる相続税額を計算するステップです。
財産を相続する権利のある遺族(法定相続人と言います)が、まずは、実際どれだけ相続したかに関わりなく、法律で定めた「一定の割合」にしたがって遺産を相続したものと仮定して相続税額の計算をします。
この「一定の割合」のことを「法定相続分」といいます。
法定相続分とは、被相続人と法定相続人との関係(妻とか子とか)によって法律で定められた、法定相続人の「遺産をもらうことのできる割合」のことです。
なお、法定相続人が誰と誰であるかという組み合わせによって、遺産を相続できる優先順位とその際の法定相続分が同じ人でも変わってきます。
法定相続分とは
(1)法定相続人の優先順位
被相続人の配偶者は常に相続人になります。配偶者以外の人は、次の順位で配偶者と一緒に法定相続人になります。
第1順位 | 被相続人の子供 |
第2順位 | 被相続人の父母や祖父母などの直系尊属 |
第3順位 | 被相続人の兄弟姉妹 |
(注1) 相続を放棄した人は、初めから法廷相続人でなかったものとされます。
(注2) 内縁関係の人は、法定相続人に含まれません。
(2)法定相続分
法定相続人 | 配偶者の法定相続分 | 配偶者以外の法定相続分 |
配偶者と子供 | 1/2 | 1/2 |
配偶者と直系尊属 | 2/3 | 1/3 |
配偶者と兄弟姉妹 | 3/4 | 1/4 |
(注) 子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として配偶者以外の法定相続分を均等に分けた割合となります。
たとえば、夫が亡くなった時の遺族が妻と子ども2人の場合には、妻(配偶者)の法定相続分は全体の1/2。子供は2人合わせて1/2なので、一人一人はその半分の1/4(1/2☓1/2)となるという感じです。
相続税額については、まずは、課税遺産総額を、法定相続人がそれぞれこの法定相続分(上記の表を参照)に従い相続をしたものとして、一人ひとりの相続税額を計算し、それを合計して「相続税の総額」を計算します。(これが国に支払うべき合計の金額です)
たとえば、法定相続人が妻(配偶者)と子供が2人で、課税遺産総額が4000万円だったとしましょう。
その場合、妻は2000万円(4000万円☓1/2)、子供はそれぞれ1000万円(4000万円☓1/4)を相続したものと仮定します。
そして、妻、子どもそれぞれの相続税額を計算します。
相続税は相続する金額に応じてそれぞれ課税される税率が決まっています。
実際の税額は下記の「相続税速算表」に従い、相続をする金額に税率を掛けて控除額を差し引いた金額となります。
今回の例では
子供A:1000万円☓10%=100万円
子供B:1000万円☓10%=100万円
合計:250万円+100万円+100万円=450万円
つまり、国に納税する「相続税の総額」は450万円となるのです。
相続税速算表
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
(ステップ2)各人が納付すべき相続税額
「相続税の総額」が決まったら、今度は「各人が納付すべき相続税額」を計算します。
「各人が納付すべき相続税額」は、相続税の総額に遺産総額のうち各相続人が実際に相続をした割合(相続分といいます)を掛けます。
先ほどの例では、法定相続分に従って
妻が1/2、子供2人(AとBとします)がそれぞれ1/4相続すると仮定して算出し、
相続税の総額が450万円となりましたよね?
しかし、実際の遺産相続の配分というものは、それぞれの家庭事情によって異なるものです。
もし、遺産総額全体のうち妻が1/2、子供Aが1/3、子供Bが1/6を相続したとしましょう。すると各人が納付すべき相続税額は次のようになります
子供A:450万円☓1/3=150万円
子供B:450万円☓1/6=75万円
合計:225万円+150万円+75万円=450万円
このように、相続税額の計算は、「ケーキの大きさと配分」に例えることができます。
すなわち、
まずはステップ1で「ケーキの大きさ(相続税の総額)」を求めたのちに、
ステップ2で、実際に「ケーキを食べた割合(相続分)」に応じた金額を、各人それぞれが納付すべき相続税額とすることにしているのです。
※1 亡くなった人から、死亡する3年以内に財産を贈与されている場合には、贈与された財産の評価額を遺産総額に加算します。
※2 計算により求められた各人が納付すべき相続税額から、相続人が未成年者や障害者であった場合の「未成年者控除」や「障害者控除」など、事情に応じた控除額を差し引くこともあります。
※3 配偶者が相続した分については、法定相続分または1億6000万円までは実質的に無税とされる「配偶者の税額軽減」があります。
では「不動産」の場合は、どのように評価されるの?
ここでは、主な「プラスの財産」である不動産の金額がどのように評価されるのかを、ひとつずつ見ていきます。
(1)家屋の評価方法
家屋の評価は、とても簡単です。
マイホームについては、固定資産台帳という書類に記載されている家屋の「固定資産税評価額」が、そのまま相続税における評価額になります。
この「固定資産税評価額」は、家屋の場合、実際の価値よりも小さくなっていることが多々あります。
たとえば、新築の場合は、その取得価額(購入するのに掛かった金額)の6割程度に算定されることが多いようです。
もちろん、築年数により劣化分の評価額は変わりますので、くわしくは以下のページを参照してください。
CHECK 固定資産税評価額の調べ方
(2)土地の評価方法
家屋に対して、土地の評価は少し複雑になります。
まず、その評価を知りたい「土地」の所在地(場所)によって評価方法が違います。さらに、自分が利用している土地と、他人に貸している土地とでも違うのです。
くわしく見てまいりましょう。
その土地が、開発の進んだ市街地にある場合は「路線価方式」が、
まだ開発のされていない市街地以外にある場合は「倍率方式」が適用されます。
「路線価」という道路毎に定めらた評価額が付されているところは路線価方式で、路線価がないところは倍率方式ということです。
路線価方式
相続税上の土地の評価額は、まず土地の1㎡あたりの単価を求め、それに面積を掛けあわせて計算をします。
では、その単価はどうやって求めるのでしょうか?
それぞれの土地に直接単価が定められているわけではなく、一つ一つの道路に対し税務署が定める「路線価」という評価額がつけられています。
つまり、所有している土地が面している道路の路線価が、その土地の単価となるわけです。
この路線価は、国税庁が公表している「路線価図」に記載されています。
以下は路線価図の抜粋です。
ただし、土地によっては、複数の道路に面している場合があります。その場合には、それぞれの路線価を加味し、単価を「上乗せ」します。
反対に、その土地が道路に面している「入口」が狭かったり、入口に比べて奥行きが極端に長かったり、あるいは使い勝手の悪い形だったりした場合には、それぞれ「減額」をします。
これらの上乗せや減額といった「調整」を加えて1㎡あたりの単価を求め、その金額に面積を掛けることで土地の評価額を計算するのです。
つまり、
ということです。
倍率方式
一方、市街地以外の宅地や田畑、山林、原野などには路線価は設定されていません。
路線価の設定されていない土地については「倍率方式」を適用します。
「倍率方式」では、その土地の「固定資産税評価額」に、「倍率表」という表に記載されている(その土地の所在地区と土地の種類ごとに定められた)「倍率」をかけて評価額を計算します。
つまり、倍率方式の場合は
ということです。
この固定資産税評価額は、自治体により算出されたもので、送付されてきた「固定資産税の納付書」や、自治体に発行してもらった「固定資産評価証明書」という書類で確認をします。
いずれにせよ、相続税法上の不動産の評価額は一定のルールで計算されたもので、必ずしも、その不動産の時価(市場で売買される価格)を表すものではありません。
ちなみに、バブル期において不動産の時価は、おおむね相続税評価額よりも高かったものですが、バブル崩壊後には逆転して時価が相続税評価額を下回りました。
しかし最近では都心部を中心に再び時価が相続税評価額を上回ることが増えてきました。
むしろ、不動産の相続税評価額と時価にはズレがあることのほうが多いということを覚えておいてください。
(3)他人に賃貸してる場合の「不動産」の評価方法
自分が利用をしている不動産と、他人に貸している不動産とでは、他人に貸している不動産のほうが評価額が低くなります。
他人に不動産を貸すと、借主も「すぐに追い出されないように抵抗できる」という一定の権利を持つことになります。
その権利のうち、借主が土地を借りて自分で家屋を建てた場合は「借地権」、マンションや店舗などの家屋を借りた場合は「借家権」といいます。
そうすることで、貸している人が、自分の都合で借りている人を勝手に追い出せないようにしているのです。
借主にもこれらの権利があるため、他人に貸した不動産は、貸主の都合だけで簡単に売買したり別に利用したりすることができません。
そのため、他人に貸した不動産は、この借地権や借家権など「借主が持つ権利」に相当する金額を控除した金額が、その不動産の評価額となるのです。
ただし、賃貸用の不動産であっても、相続が起きた時点で空室の場合、借主はいないので借主が持つ権利を控除する必要はありません。
つまり、入居者のいる賃貸用不動産のほうが、空室の賃貸用不動産より、評価額が低くて済むことになるのです。
では、具体的に、入居者がいる場合といない場合ではどれくらい評価額が変わるのでしょうか?
賃貸している家屋(貸家)
自分で利用する家屋(自用家屋といいます)は、その固定資産税評価額がそのまま相続税の評価額となります。
しかし、借主のいる賃貸用の家屋(貸家といいます)の場合には、そこから借家を借りている借主の権利である「借家権」に相当する金額を差し引くことになります。
その家屋についての借主が持つ権利の割合を「借家権割合」といいますが、これは、その家屋のある地域によって異なります。たとえば、東京都では借家権割合は30%とされています。東京都の場合、借主は家屋の30%分だけの価値を持っているということです。
貸家の評価額については、次のように計算されます。
言い換えれば、この場合、この貸家は自分で使っている家屋(自用家屋)の70%の金額で評価がされるということです。
賃貸している土地の違い(貸宅地と貸家建付地)
他人に貸した土地については、その土地の上に建っている家屋が誰のものなのかにより、評価方法は異なります。
家屋を「借主」が建てた場合には、その土地を「貸宅地」といい、
家屋が「貸主」が建てた場合は、その土地を「貸家建付地」といいます。
1:貸宅地(家屋が借主のものの場合)
まず、家屋が借主(その土地を借りた人)のものである場合、その土地について借主は「借地権」を持つことになります。
その土地に対して借主の持つ権利の割合を「借地権割合」といいますが、その割合は地区ごとに異なるものの、だいたい60%〜80%くらいになることが多いです。
一般的に、この借地権相当の金額が、借主に出て行ってもらう時の立ち退き料の金額となり、もしその土地を誰かに売却した場合には、借主は全体の譲渡対価のうち借地権割合を掛けた金額を受け取ることになります。
そのため、貸主の権利である貸宅地については、自分で利用する宅地(自用地)の評価額から借地権部分を差し引いた残りの金額となるのです。
貸主が所有する貸宅地の評価額については、次のように計算されます。
2:貸家建付地(家屋も貸主のものの場合)
一方、家屋が貸主のものである場合、本来、借地権は存在しません。
しかし、土地にも「借主の借家権の一部」が及ぶものと相続税法では考えます。
では、その「借主の借家権の一部」である借主の権利相当額はどのように計算するのでしょうか?
借主の権利相当額は、「借地権割合 × 借家権割合」として計算をします。
つまり、貸主が所有する貸家建付地の評価額は、次のように計算されます。
貸家建付地の評価額=自用地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合)
なお借地権は、借主にとって非常に強力な権利であるため、最近では、貸主が借主に家屋を建てさせるような契約をすることが少なくなっています。
一般的な賃貸用の物件は「土地も家屋も貸主が所有する」という場合が多いといえるでしょう。
使っていない土地は、貸すか売る?
(相続税を安くできるかも…)
家屋の建てられていない土地のことを「更地(さらち)」といいます。
更地をそのまま放置していると(青空駐車場として貸していても)、賃料以上の固定資産税を支払い続けることが多いです。
では、この何も活用されていない更地に賃貸用のマンションやアパートを建てたらどうなるのでしょうか?
自分が所有し自分が使っている土地を「自用地」といいますが、更地は自用地です(これら、使わずに遊ばせている不動産のことを「遊休不動産」といいます)。
「自用地」とされる「更地」には借主の権利が及ばないので、相続税上のその土地の評価額は単価に面積を掛けたままの額(100%)となります。これは相続税の計算上は明らかに不利です。
この更地に賃貸用のマンションやアパートを建てれば、家屋も貸主のものであるので、この土地は「貸家建付地」になり、固定資産税ばかり掛かる全くの金食い虫であった遊休不動産が有効活用される上に、相続税を減らせる可能性があります。
くわしくは以下のページをご覧ください。
CHECK 遊休不動産とは?
国税庁の相続税計算シミュレーターの使い方【実例】
ここまで解説したとおり、相続税、特に不動産の関わった税金の計算はかなり複雑です。そのため、概算であってもシミュレーターを使用するのが良いでしょう。
国税庁のホームページにある相続税計算シミュレーターでは、画面の案内に従って法定相続人の数や相続財産などの入力をしていくと、相続税の申告が必要かどうかが自動判定されます。
また、相続税の申告が必要となった場合、それぞれの相続人がいくら相続税を納めれば良いのかの目安も自動計算されます。
それでは、ここからは、国税庁のホームページにあるシミュレーターの使い方について、実際の画面で説明していきます。
「相続税申告要否判定コーナー」へのアクセス
※ スマホでは本シミュレーターを使用することはできません。パソコンからアクセスして使用しましょう。
国税庁のホームページにアクセスし、右側にある「相続税の申告要否判定コーナー」をクリックします。
「判定を始める方はこちら」という項目の [スタート] ボタンをクリックします。
「相続税申告要否判定コーナー」利用前の確認
「相続税の申告要否判定コーナーご利用の前に」画面が表示されます。
下記の各項目について説明がありますので、確認して次の画面へ進みます。
- 相続税の概要
- 申告要否判定までの流れ
- 使用できる環境
- データの保存・読み出し
動作環境としては、Windows7以降、Mac ならば MacOS 10.9 Mavericks 以降のパソコンが必要です。OS 標準のブラウザソフトでの確認が取れています。
ステップ1:法定相続人の数の入力
最初のステップは、法定相続人の数の入力となります。
法定相続人の数は、遺産に係る基礎控除額に影響します。
「遺産に係る基礎控除額」とは、遺産がこの金額以下ならば相続税がかからない金額のことです(税金計算の際に差し引かれる)。
実際に入力画面を見ていきましょう。
たとえば、亡くなられた方にご兄弟姉妹はなく、奥様がご存命で、お子様2人いらっしゃる場合は次のように入力します。
2.その他相続人の有無 子供「はい」「2人」
父母「いいえ」
兄弟姉妹「いいえ」
3.遺産に係る基礎控除額
① [控除額の計算]ボタンを押す
⇒[遺産に係る基礎控除額]が「4,800万円」と表示される
② [入力完了(次へ)]ボタンを押す
今回の「配偶者あり、子供ふたり」のケースでは、遺産が4,800万円を超えた場合のみ相続税の支払いが必要になるというわけです。
この時納めるべき相続税は4,800万円を超えた分の遺産が計算対象となります。
次のステップでは、遺産の総額を計算していきます。
ステップ2:相続財産等の入力
相続税の計算では、現金や土地などの「プラスの財産」から、借金などの「マイナスの財産」や葬儀費用などの経費を差し引くことができます。
ここでは、相続財産等の入力をしていきます。
現金や預貯金、有価証券などの遺産は、そのままの金額で入力していきます。
ここからは、入力が少々複雑な土地や建物などの不動産の評価金額の入力方法について詳しく説明します。
ステップ2−1:相続財産のうち、不動産についての入力方法
相続財産のうち、不動産についての入力項目は「土地等」「建物」の2項目になります。
今回は、本文でも取り上げた「東京都渋谷区神南1丁目にある100㎡の賃貸物件」を相続したとして入力していくことにします。
ステップ2−1−1:相続財産の「土地等」の入力
土地などに関する相続財産を入力するには、「相続財産」項目の「土地等」欄で [入力する] ボタンをクリックします。
「土地等の入力」画面が表示されます。
土地の評価方式には「路線価」方式と「倍率」方式があります。
どちらで評価されるのかは、土地の場所によります。基本的には、市街地ならば「路線価」方式、それ以外(山林など)ならば「倍率」方式だと考えておけばよいでしょう。
正確には、該当の土地が「路線価図」に掲載されているかで確認します。
今回、事例として取り上げた東京都渋谷区神南1丁目の土地は「路線価図」に掲載されているので、[路線価] ボタンをクリックします。
「路線価方式」で計算される土地等の入力
「土地等の入力(路線価方式)」画面が表示されるので、土地の形状を選択します。
ふたつの道路に面している土地の場合は、それぞれの路線価が加味され、単価が上がるなど、土地の形状によって路線価の計算が変わってきます。
※ 土地の形状がわからない場合は、[路線価図の閲覧]ボタンをクリックして確認できます。
今回の土地は、「1つの道路に接している土地等」に当てはまるので、該当形状をクリックします。
「1つの道路に接している土地等」専用画面に切り替わります。
下記の項目を入力していきます。
- 土地等の利用区分
- 借地権割合
- 路線価
- 所在地
- 土地等の面積
- 持分割合
ここがいちばん難しいところです。ゆっくりと進めていきましょう。
土地の利用区分
土地の利用区分としては「自用地」「貸宅地」「貸家建付地」「借地権」があります。
▼土地の利用区分
- 自用地:自宅や借主のいない更地
- 貸宅地:他人名義の建物が建てられた貸している土地
- 貸付建付地:自分名義の賃貸用アパートなどが建っている土地
- 借地権:借りた土地に自分名義の建物を建てた時
今回は賃貸に出している物件の建っている土地なので、「貸家建付地」を選びます。
●路線価・借地権割合
路線価図より転記します。
今回の場合は、路線価は 1,420千円、借地権割合は C:70% を入力します。
●所在地
土地等の所在地を入力します。
相続税の計算には影響しないため、必須項目ではありませんが、入力しておいたほうがわかりやすいでしょう。
●土地等の面積
該当の土地等の面積を入力します。
今回の場合は、100㎡ となります。
●持分割合
すべてを一人で所有しているのではなく、複数の人で所有している場合を「共有」といい、全体に占める自分の所有している割合を「持分割合」といいます。
共有である場合、「はい」を選択し、自分の持分割合を入力します。
「2 評価額」項目の [計算]ボタンをクリックすると、土地等の評価額が自動計算されます。
[入力終了(次へ)] ボタンをクリックすると、「土地等の入力」画面の表に評価額が反映されます。
他に相続する土地等があれば、同様に入力を行っていきます。
相続するすべての土地等の評価額の入力が終わったら、[入力終了(次へ)]ボタンをクリックします。
ステップ2−1−2:相続財産の「建物」の入力
建物に関する共有財産を「相続財産」項目の「建物」欄で [入力する] ボタンをクリックします。
「建物の入力」画面が表示されます。
相続税の計算における建物の評価は、固定資産税評価額に基づき、利用区分や持分割合を加味されて計算されます。
固定資産税評価額は、固定資産税納付書の「課税証明書」から転記します。
今回は賃貸に出している物件なので、利用区分として「貸家」を選択しました。
[計算]ボタンをクリックすると、建物の評価額が自動計算されます。
[入力終了(次へ)] ボタンをクリックすると、「相続財産等の入力」画面の表に建物の評価額が反映されます。
他に相続する建物があれば、同様に入力を行っていきます。
同様にして、「有価証券」「現金・預貯金」などの「相続財産」の項目、「債務及び葬式費用」の項目も入力します。「相続開始前3年以内の贈与財産」があれば、忘れずに入力してください。
すべての入力が終わったら、[入力終了(次へ)]ボタンをクリックします。
ステップ3:申告要否判定
「申告要否判定」画面が表示されます。
今回、事例として取り上げた「配偶者あり、子供ふたり」のケースでは、基礎控除額(相続税がかからない金額)は4,800万円でした。ここまでで入力してきた相続財産は約2億円ですので、相続税の支払いが必要となります。
では、いったい相続税はいくらになるのか? 誰が、いくら払うのか?
[特例適用・税額計算シミュレーション] ボタンをクリックして目安を知ることができます。
「特例適用・税額計算シミュレーション」画面が表示されます。
故人が住んでいた自宅などを相続される場合は、一定の条件のもとで「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」を適用することができます。
該当する場合は、[小規模宅地等の特例の適用] ボタンをクリックします。
(今回は賃貸物件の相続のため適用はありません)
相続税について、誰がいくら支払うかの税額シミュレーションは、[相続税の税額計算] ボタンをクリックします。
「相続税の税額計算(「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」)」画面が表示されます。
相続税額は2段階で計算されます。
そのため、「1 各人の課税価格の合計額」に必要項目を入力して、「2 相続税の総額」を計算したのち、各自の相続割合で案分されます。
※ 配偶者については、軽減措置があります。
[入力終了(次へ)]ボタンをクリックすると、「特例適用・税額計算シミュレーション」画面に戻ります。
「2 各人の納付すべき税額(配偶者の税額軽減(配偶者特別控除)の適用を含む。)」項目に、相続する人それぞれの相続税の支払い額が表示されています。
今回の「配偶者あり、子供ふたり」で「東京都渋谷区神南1丁目にある100㎡の賃貸物件」を相続したというケースでは、配偶者の相続税はゼロ、子供は約600万円ずつ相続税を支払う目安とわかりました。
このようにして、国税庁の「相続税申告要否判定コーナー」を使用することで、相続する人が負担する相続税額の目安をシミュレーションすることができます。
相続税の支払い額によっては、土地活用や不動産売却も視野に入れた方がよいケースもあるので、まずは一度シミュレーションしてみましょう。
この記事のまとめ
・相続税額は全体の相続税を計算した上で、各人が相続した割合により計算される(2ステップ必要)
・不動産については、さまざまなケースにより相続税の評価方法が定められているが、評価額は必ずしも時価ではない
・賃貸として貸している不動産のほうが、賃貸していない不動産よりも相続税は安い
・更地は、家屋を建てて賃貸することで相続税が安くなること「も」ある。しかし、あくまでも採算が合うことが必須条件