不動産を売却し利益が出ると、譲渡所得税と住民税が課税されます。
しかし、マイホームを売却するというのは、どうしてもお金が必要なためであるということが多いもの。たとえば、新たなマイホームの買い換え資金が必要だったり、住宅ローンの残債の支払いがあったりと。
そのため、(一定の条件を満たしていれば)マイホームを売った時については、他の不動産を売った時よりも税金上有利な取り扱いがされているのです。
c今回は、マイホームを売った時の税金の優遇措置について
- どんな時、どんな条件だと優遇措置が受けられるのか?
- 他の優遇措置とダブルで適用できるのか?
- 具体的にどのように税金が優遇されるのか?
などなど、マイホームを売却する前に知っておかないと損してしまう特例についてくわしく説明いたします。
CHECK 不動産を売却するといくら税金がかかるのか?
CHECK 古い物件で、税金がどうなるか分からない場合は、コチラもチェック!
目次
マイホームを売って『利益』が出た時の優遇措置
マイホームを売って、利益が出たときの優遇措置は大きく分けて3つあります。
それぞれに「適用条件」などの、細かい注意点があるので、順を追ってくわしく見ていきましょう。
《売却》 利益3000万円までは税金がかからない
……居住用不動産の3000万円控除
一定の要件を満たすマイホーム(居住用不動産)を譲渡した場合については、税法上の優遇措置があります。
居住用不動産の3000万円控除の適用条件概要
- 自分の住んでいたマイホームを売った(住まなくなって3年以内)
- 親族間や自分がオーナーである会社への譲渡などは適用外
※ 所有期間は関係ない
● 詳しくは、マイホームを売った時の特例|国税庁を確認してください。
上記条件を満たす場合、通常計算される譲渡所得(不動産を売って儲かった金額)から3000万円を控除することができます。
つまり、
- 不動産を売って儲かった金額-3000万円=課税対象となる金額
で済むということです。
要するに、不動産を売って儲かった金額である譲渡所得が3000万円以下であれば、課税対象となる金額は0円になる、ということ。
しかし、この3000万円控除の特例は、確定申告をすることではじめて適用されます。
たとえば、譲渡所得が2000万円だったとしましょう。このとき、3000万円控除を適用すれば課税対象となる金額は0円になるので、税金は1円も払わなくて大丈夫。
でも、確定申告をしないと通常通りの税金が課されてしまうんです。
だから、確定申告は絶対にしなきゃダメなんですね。
《売却》 所有期間が10年を超えるなら利益6000万円までは税金が軽くなる
……所有期間10年超の譲渡の軽減税率(10年超軽減税率)
通常、不動産を売って利益が出た場合、その所有期間が5年以内なら「短期譲渡」、5年超であれば「長期譲渡」として、下記のように異なる税率が譲渡所得に課されます。
CHECK 不動産を売却するといくら税金がかかるのか?
しかし特例があります。それが、「10年超軽減税率」です。
所有期間10年超の譲渡の軽減税率(10年超軽減税率) の適用条件概要
- 自分の住んでいたマイホームを売った(住まなくなって3年以内)
- 物件の所有期間は10年を超えている
- 親族間や自分がオーナーである会社への譲渡などは適用外
● 詳しくは、マイホームを売った時の軽減税率の特例|国税庁を確認してください。
所有期間が10年超の一定のマイホームを譲渡した場合には、その譲渡所得の6000万円までの部分にかかる税率が軽くなる、という制度です。
つまり、マイホームを譲渡した時の所有期間ごとの税率については次のようになります。
不動産譲渡所得に対する税率 | 所有期間5年以内 | 所有期間5年超 | 所有期間10年超 (譲渡所得6000万円以下の部分)* |
所得税 | 30% | 15% | 6% |
住民税 | 9% | 5% | 4% |
復興特別所得税 | 0.63% | 0.315% | 0.126% |
合計 | 39.63% | 20.315% | 10.126% |
*課税所得が6000万円超の部分には、所有期間5年超と同じ税率が適用されます。
《買換》 新しいマイホームに充てた売却益は譲渡所得ナシと扱われる
……居住用不動産の買換特例(買換特例)
下記のような一定の要件を満たしたマイホームを譲渡した上で、新たにマイホームを購入した場合には、一定金額まで「譲渡所得をなかったものとする」ことが出来ます。
居住用不動産の買換特例(買換特例)の適用条件概要
- 自分が住んでいるマイホームを売った(居住期間10年以上)
- かつ、マイホームを買い換えた(売った年の前年から翌年までの間)
● 詳しくは、特定のマイホームを買い換えた時の特例|国税庁を確認してください。
この特例を「居住用不動産の買換特例」といいます。
新しいマイホームの方が高い場合
例えば、マイホームを5000万円で譲渡し、新たに6000万円のマイホームを購入したとします。
この譲渡対価5000万円はすべて新しいマイホームの購入に充てられており、手許にお金は残らないことになります。
なのに、もし古いマイホームを売って利益が出たと税金が課税されてしまっては、新しいマイホームを買うための追加購入資金1000万円(6000万円 − 5000万円)が、簡単には出せなくなってしまいます。
この場合に、「買換特例」を利用すれば、譲渡した自宅についての譲渡所得はなかったものとされるのです。
古いマイホームの方が高く売れた場合
では、譲渡対価のすべてを新たなマイホームの取得に充てなかった場合はどうでしょう?
例えば古いマイホームを5000万円で譲渡し、新たに4000万円の自宅を購入した場合には、新しいマイホームの購入に充てられた4000万円に対応する部分の譲渡所得はなかったものとされます。
つまり、譲渡対価のうち、手許に残った1000万円にだけ税金が掛かることになるのです。
マイホームを売った時の3つの優遇措置は重複適用できる?
では、不動産を売って利益が出た時のこれらの優遇措置は、ダブルであるいはトリプルで適用できるものなのでしょうか?
「3000万円控除」と「10年超軽減税率」はダブル適用できる!
すでに説明をした「3000万円特別控除」と「10年超軽減税率」は同時に適用することが可能です。
つまり、所有期間が10年超である一定の要件を満たしたマイホームの譲渡については、
譲渡所得から3000万円を差し引くことが出来るだけでなく、残った金額(差し引いた後の金額)が6000万円までの場合は、通常の長期譲渡のおよそ半分にあたる税率を適用することができるわけです。
「買換特例」と他の優遇措置は重複適用できない
では、買い換え特例は、「3000万円特別控除」や「10年超軽減税率」と同時に適用することはできるのでしょうか?
3000万円特別控除や軽減税率と買い換え特例は重複しての適用はできません。
OK 3000万円 特別控除+軽減税率
NG 3000万円 特別控除+買い換え特例
NG 軽減税率+買い換え特例
つまり、所有期間10年超のマイホームを譲渡した場合、「3000万円特別控除+軽減税率」VS「買換特例」のどちらが得なのか、自分で計算して選ばなければいけません。
そして、この判断をするときに、買換特例について注意しなくてはいけないことがあります!
「買換特例」と「3000万円控除」の最大の違いは、あとで返すかどうか
実は、居住用不動産の3000万円控除による恩典は「もらいっぱなし」であるのに対して、買換特例による恩典は「支払いを後回しにしてくれた。が、いずれ返さなくてはいけない」という大きな違いがあるのです。
買換特例を適用すると「譲渡がなかったもの」とできると言いました。
が、それは、あくまでも「今回の取引において」ということ。
決して「新しいマイホームの購入に充てられた金額が、譲渡所得から控除されている」という意味ではありません。
将来、新しく購入したマイホームをさらに譲渡する時のことを想像してみてください。
このときの譲渡所得は、「譲渡対価 −(取得費+譲渡費用)」となります。
この「取得費」というのが、マイホームを買ったときの原価のことなんですね。
詳しくは、下記ををチェック!
CHECK 不動産を売却するといくら税金がかかるのか?
しかし、「買換特例を利用した場合、ここで差し引く取得費は新しく購入したマイホームの取得費ではなく、その一つ前の古いマイホームの取得費なのです。
古いマイホームの取得費はずっと以前に購入したものなので、新しく購入したマイホームの取得費よりも小さいことが多いはずです。
差し引く取得費が小さくなるということは、新しく購入したマイホームを売る時の「譲渡所得金額」は、買換特例を適用しなかった時よりも、大きくなるということです。そして、「譲渡所得」が大きくなれば、もちろんかかる税金も大きくなります。
つまり、新しく取得したマイホームを将来売ったときに、買換特例により「譲渡がなかったもの」とされた分も合わせて、譲渡所得として税金が課税されるということなのです。
要するに、買換特例は税金の軽減措置ではなく、その税負担を将来に先送りしたようなものなのです。
その一方、3000万円控除を適用した場合は、新たに購入したマイホームを譲渡した際の取得費は、新たに購入したマイホームの金額をベースに計算されます。
CHECK 建物の取得価額と取得費、減価償却について
つまり、3000万円控除の適用は「もらいっぱなし」というわけです。
「買換特例」 VS 「3000万円控除+10年超軽減税率」どちらが得?
「3000万円特別控除+軽減税率」VS「買い換え特例」のどちらも適用できる場合には、まず「3000万円特別控除+軽減税率」の適用を検討します。
こっちのほうが、将来的に考えてお得なことが多いからです。
ただ、これらを適用しても譲渡所得の金額が大きく、税金を支払うと必要なお金が確保できないというのであれば、目先の税負担を回避するために、苦肉の策として「買換特例」の適用を検討するとよいでしょう。
5年以上所有しているマイホームを売って『損失』が出た時の優遇措置
さて、ここまでは、マイホームを売って利益が出た場合の税法上の優遇措置についてみてきました。
しかし、バブル期以降、不動産価格は下落している場所のほうが多く、マイホームを譲渡しても赤字となる場合もあります。
では、マイホームを売って赤字になった場合には、優遇措置はあるのでしょうか?
通常は不動産売却での損失は他の所得と相殺できない。でも例外がある!
通常であれば、不動産を譲渡したことによる赤字(譲渡損失)は、給与所得や不動産所得などの、他の所得と合計して計算することはできません。
不動産の譲渡による利益や損失は他の所得と合算せずに税金を計算する「分離課税」なのです。

総合課税と分離課税のお話
譲渡所得は、給与所得や事業所得といった他の所得と合算せずに、譲渡所得の金額だけで課税額を計算します。
譲渡所得は他の所得と分離して税金が計算されることから「分離課税」と言われています。「総合課税」とされた所得には、所得額が大きくなるほど高い税率が適用される累進課税が適用されます。
もう少し詳しく説明すると・・・
個人が得た収入は、どうやって稼いだかによって分類してから所得…つまり収入のうち何円が課税額計算のベースにされるかを計算します。
(例)
「不動産所得」不動産を賃貸して得た所得
「事業所得」事業をして稼いだ所得
「給与所得」雇用されて受け取った給与
なぜこのように区分けされているかというと、それぞれの所得区分によって差し引く必要経費や控除などの取り扱いに違いがあるからです。
こうして各区分ごとの所得額をいちど合算し、その合計額に税率をかけて課税額を計算するのが「総合課税」です。
これら総合課税の所得と合計せずに、ひと区分だけで個別に税額を計算するのが「分離課税」です。
総合課税の税額+分離課税の税額=トータルの課税額
ということですね。
所得税や住民税は、課税対象となる「所得金額」に税率を掛けて計算します。
そのうちの所得税については、課税対象となる所得の金額が大きくなるほど税率も高くなっていきます。
これを「累進課税」といいます。
まとめて計算できるのは同じ年に譲渡をした、別の不動産譲渡で得た利益のみです。
しかし、マイホームを手放した理由は住宅ローンの返済が大変だからなのに、マイホームを手放した時に得た譲渡対価だけではローンが完済できない、という場合などもあるはず。
あるいは、古いマイホームを売って損をしたのに、新しいマイホームを買うのに住宅ローンをまた抱えるということもあるでしょう。
そこで特例として、その年の1月1日時点で5年以上所有しているマイホームの売却・もしくは買い換えで損した場合には優遇措置が用意されているのです。
くわしい適用条件を見ていきましょう。
《売却》ローンが残る場合は、損失分は他の所得と相殺できる
……特定の居住用不動産譲渡の損失の損益通算・繰越控除(ローン残債特例)
下記の条件を満たす場合、自宅を売って損した額(譲渡損失)のうち一定の金額までは、他の所得と相殺して、税金を減らすことができます。
譲渡損失と他の所得とを合算してその年の課税される所得を計算することを損益通算(相殺)といいます。
特定の居住用不動産譲渡の損失の損益通算・繰越控除(ローン残債特例)の適用条件概要
- 住宅ローンを組んでマイホームを購入していた
- 所有期間が5年を超えるマイホームを譲渡して損失が生じた
- かつ、売却した代金をすべて返済に充てても住宅ローンが残ってしまう
※ 新しいマイホームを購入したかどうかは関係ない
● 詳しくは、住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じた時|国税庁を確認してください。
これは、住宅ローン返済が重くてマイホームを手放し、賃貸住宅に移り住んだ場合でも利用可能です。もし損失が出ている場合は、この損益通算の対象にならないか、チェックしてみましょう。
具体的に他の所得と損益通算できる金額は、
(2)マイホームの譲渡損失
他の所得と損益通算できる金額=(1)と(2)のいずれか小さい金額
となります。
要するに譲渡損失のすべてでも、住宅ローンを完済できなかった金額のすべてでもなく、譲渡損失のうち住宅ローンを完済できなかった金額は他の所得と合算ができるということです。
税金というのは、所得が多いほど、負担が重くなるもの。
しかし、この制度を使えば、マイホームを売った際の損失が他の所得と合算されるため、税金の負担を軽くすることができるのです。
さらに、他の所得と損益通算をしてもまだ残った譲渡損失については、翌年以後3年間の所得と相殺をすることも可能です。この譲渡損失を繰り越して翌年以降の所得と相殺することを繰越控除といいます。
だから、確定申告をするのを忘れないでくださいね。
《買換》住宅ローンで新居購入した場合、損した分は他の所得と相殺できる……居住用不動産の買換損失の損益通算・繰越控除(新規ローン特例)
マイホーム買い換えで損して下記の要件を満たす場合には、その譲渡損失を他の所得の利益から差し引くことができます。
居住用不動産の買換損失の損益通算・繰越控除(新規ローン特例)の適用条件概要
- 所有期間が5年を超えるマイホームを譲渡して損失が生じた
- かつ、10年以上のローンを組んで新しい住宅に住み替えた
※ 売却した建物に住宅ローンが残っているかどうかは関係ない
● 詳しくは、マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じた時|国税庁を確認してください。
この特例は、譲渡した自宅に住宅ローンの残高が残っていることが条件になっていません。
つまり、もう既に住宅ローンは完済しているものの、マイホームを売却して損をすることは覚悟の上で、新しいマイホームを住宅ローンで購入したような場合が想定されるでしょう。
こちらも上の(1)と同様に、譲渡損失を他の所得と損益通算することが認められます。
同じように、損失額が1年分の所得と相殺しきれないほど大きな額であれば、売却した年から4年目までは繰り越して毎年の所得と相殺することができます。
優遇を受けるには「確定申告」が必要
不動産を売って損失が出た時の税金の優遇措置をまとめると、マイホームを譲渡し、
- マイホームの譲渡対価では住宅ローンが完済できない場合
- 住宅ローンで新たに自宅を購入した場合
には、そのマイホームの譲渡損について、一定の金額まで他の所得とまとめて計算したり、翌年以降の所得と相殺したりすることが出来るということです。
なお、不動産を売って利益が出た時の優遇措置と同様、不動産を売って損失が出た時の優遇措置についても、確定申告をすることで初めて適用が可能になります。
これにより、給与などから差し引かれた所得税が還付されたり、翌年以降の税金が安くなったりすることもあるはずです。
黙っていても勝手に税金が軽減されるわけではないので、適用要件をしっかり確認した上で適切に申告をするようにしたいものです。
「住宅ローン控除」と「マイホームを売った時の特例」は、重複適用できる?
一定のマイホームを住宅ローンで購入した場合、年末の借入金残高に一定率を乗じた所得税額等を控除できる「住宅ローン控除」という優遇措置があります。
CHECK 住宅ローン控除とは?
こちらは、マイホームを譲渡したかどうかは関係なく、はじめてのマイホーム取得でも適用されます。
では、この住宅ローン控除とマイホームを売って『利益』が出た時の優遇措置は重複して適用できるのでしょうか?
例えば、古いマイホームを売って多額の利益が出たので3000万円控除と10年超の軽減税率を適用し、新しいマイホームを住宅ローンで購入したような場合です。
新しいマイホームについては住宅ローン控除は適用できない
住宅ローン控除を受けるためには、所得の上限額やそのマイホームの大きさ、ローンの年数など様々な要件がありますが、その一つに居住をした年とその前後2年にマイホームを売った時の優遇措置を受けていないことというものがあります。
つまり、マイホームを売って『利益』が出た時の優遇措置を受けると、すぐに購入をした新しいマイホームについて住宅ローン控除は適用できないということです。
確定申告時には、どちらが得か見極めて申告しよう
住宅ローン控除は、給与・その他で得られる所得など毎年の所得が多い人であれば10年間で最大500万円にもなることがある優遇措置です。
ですから、マイホームを売って新たに住宅ローンでマイホームを取得した場合には、これらの「マイホームを売った時の優遇措置」と「住宅ローン控除」のどちらを使うほうが得なのかを比較した上で、確定申告をする必要があるのです。
※ ちなみに、マイホームを売って損をした時の優遇措置と住宅ローン控除の併用はできます。
【補足】売却にあたって、元の購入価格が分からないときは?
不動産を売った時の優遇措置は大変ありがたいものですが……
親の代から住んでいるなど、古い物件の場合、元の購入価格がわからなくなっているケースがありますよね。そんな時、そもそも利益が出るのかどうかは、どうやって計算すればいいのでしょうか?
まずは、不動産売却益(譲渡所得)はどのように計算するのかを思い出しておきましょう。
不動産を売却することで得られる利益(譲渡所得といいます)は、原則として、「不動産を売った時の価格(譲渡対価)」から「不動産を買った時の原価(取得費)」と「売るのに掛かった諸経費(譲渡費用)」を差し引いた金額となります。
詳細は、下記のページも参考にしてください。
CHECK 不動産の譲渡所得の計算方法
古すぎて購入価格が分からないときは「概算5%ルール」を使う
親の代から住んでいる…というような、古くから所有していたマイホームを売った場合、その不動産を買った時の原価というのは古すぎて資料もなくわからないということも多いもの。
では、そんな時にはどうしたら良いのでしょうか?
実は、不動産を買った時の原価(取得費)がわからない場合には、取得費を譲渡対価の5%として計算してもよいという「概算5%ルール」があります。
不動産を購入したときの原価(取得費)が、売った時の価格のたった 5% という見積もりは少なすぎる気もしますが、裏付けとなる書類がなくなってしまっているので、仕方がないですね。
「概算5%ルール」では95%が利益扱い! 優遇措置を活用しよう
不動産を売却した利益である譲渡所得は、譲渡対価ー取得費(さらに譲渡費用も差し引きますが)ですから、概算5%ルールを使うと、譲渡対価の95%が譲渡所得になるということです。
たとえば、4000万円でマイホームが売却できた時に取得費が不明な場合、取得費は200万円(4000万円☓5%)となるので、譲渡所得は3800万円(4000万円−200万円)にもなるのです。
確かに先祖伝来の土地であれば、それくらい価格は上がっているかもしれませんが、いざ新しくマイホームを買い換えたいなどという時には、その税金の支払いは大きな痛手となります。
もし、古くから所有するマイホームを売って多額の利益が出てしまった時にこそ、この税金の優遇措置を利用できないか検討をするようにしてください。
この記事のまとめ
・マイホームを売って利益が出た時の優遇措置
(1)譲渡の利益から3000万円控除できる
(2)所有期間10年超なら譲渡所得6000万円までは税率が低い
(3)所有期間10年の自宅を買い換えた場合、買った代金分まで譲渡をなかったとして税額計算も
※ 住宅ローン控除とマイホームを売った時の優遇措置は重複できない期間があるので、どちらが得なのかを考えて選択を
・マイホームを売って損が出た時の優遇措置
(1)所有期間5年超のマイホームの譲渡損は、譲渡対価では完済できなかった住宅ローンの金額まで他の所得と通算・相殺したり翌年以降に繰り越すことも可能
(2)所有期間5年超のマイホームを譲渡し住宅ローンで新居を購入した場合、その譲渡損を他の所得と通算・相殺したり翌年以降に繰り越すことも可能