不動産を売るということは一生のうちに何度もないことです。そのため、どれだけ税金が掛かるのかを知っている人は意外と少ないのが現状です。
そこで今回は、不動産を売った時の利益に関係する税金の計算方法について、
・「どんな利益」に税金がかかるのか
・「売却額」と「儲け額」の違い。「譲渡所得」の算出法
・その他、見落としてはいけない点はどこか?
・最も簡単な税金の算出方法は何か?
などなど、わずか1秒でわかる「不動産売買の税金シミュレーター」を紹介しながらくわしく説明いたします。
なお、マイホーム売却には様々な特例があるため、特集ページを用意しました。
こちらもあわせてご覧ください。
CHECK 自宅売却時の税金の優遇措置と買い換え特例について【徹底解説】
目次
不動産売却の税金は「利益が出た場合」だけ払う
不動産売却をして利益が出た場合、利益に対して所得税と住民税がかかります。これらの税金は、売却をした翌年に確定申告をして納めます(確定申告期間:2月16日~3月15日)
不動産売却で損した場合は税金は掛かりませんし、確定申告の義務もありません。
※ただし、特定の条件を満たす場合は、確定申告をすることで、税金を減らすことができます。もしもあなたがサラリーマンで源泉徴収されていたなら、確定申告をすることで還付金が返ってくることもあるのです。
その税金、自分で計算しなくちゃならないの?
不動産売却をして利益が出た場合、税理士に依頼しない限り、確定申告の時に自分で税金を計算しなくてはなりません。
しかし!(後ほどくわしく説明いたしますが)不動産売却の利益にかかる税金は、自分で計算するとなると、かなり面倒で複雑な計算なのです…
ですが、安心してください。税金計算シミュレーターを使えば、自分が納めるべき税金額を知ることができます。
不動産売買にかかる税金、実はシミュレーターで簡単に金額がわかります(わずか30秒)
不動産や税金に対する知識がなくても、以下の入力フォームにご入力いただければ、たった30秒で税金がいくらかかるかの目安がわかります。
「我が家を売ったら税金はいくらかかる?」「土地が1000万円で売れた時に払う税金額を知りたい」という方にとても便利なツールです。ぜひご利用ください。
さらにくわしく知りたい方へ。税金算出の考え方
上記の↑不動産売却の税金計算シミュレーターを使えば、専門知識のまったくない方でも簡単に「いくら税金がかかるのか」がわかりますが、「さらにくわしく計算方法が知りたい方」のために、ここから先は不動産売却にかかる税金算出の考え方と注意点、そして具体例をもとにした算出方法もご紹介いたします。
まずは超ざっくりとした計算式をご紹介
不動産売却に掛かる税金の算出方法の基本的な考え方は、下記の計算式の通りです。
不動産売却にかかる税金の計算式の基本
●不動産の所有期間5年以内の方
不動産を売却した時にかかる税金額
=不動産を売った時の儲け(譲渡所得)×39.63%
●不動産の所有期間5年超の方
不動産を売却した時にかかる税金額
=不動産を売った時の儲け(譲渡所得)×20.315%
この計算式からわかるように、
不動産を売った時の儲け(譲渡所得)に、決められた税率をかければ税金が算出されます。つまり、不動産売却時の税金計算で肝となるのは「譲渡所得」です。
「譲渡所得」が肝心なんだ。
しかし、そもそも「譲渡所得」自体を正しく算出するのは簡単ではありません。
・譲渡対価
・取得費
・譲渡費用
・固定資産税
・減価償却費
といった様々な要素が複雑に絡んでくるからです。
不動産売却で得た儲け「譲渡所得」とは?
不動産を売却することで得た儲けを「譲渡所得」といいます。
(つまり、不動産売却に掛かる税金とは、譲渡所得に掛かる税金に当たります)
一般の商売での儲けは「販売価格 – (仕入れ+経費)」で計算されますよね? 譲渡所得の計算方法も基本は同じです。売却価格から「買った時の原価+売る時にかかった経費」を差し引くことで算出できます。
計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 譲渡対価 -(取得費 + 譲渡費用)
つまり、噛み砕いて言うと…
譲渡所得 = 売った時の価格 – (買った時の原価 + 売るのにかかった経費)
ということになります。
ここで大事なのは、緑の文字で書かれた譲渡対価(売った時の価格)と取得費(買ったときの原価)です。
実は、不動産の譲渡所得の計算に必要な譲渡対価も、取得費も、「売り買いした時の価格のまま」で計算してはいけないのです。(ここ、大事です)
「譲渡所得の計算」で注意すべきポイント2つ
譲渡所得を計算する場合、注意しなくてはいけないポイントは以下の2つです。
(1)譲渡対価(売ったときの価格)に「固定資産税精算額」を加えなければならない!
譲渡対価というのは不動産を売った時の価格のことですが、単純に「物件そのものの売却価格」と考えてはいけません。
「固定資産税」についての考慮が必要です。
不動産を所有していると毎年「固定資産税」という税金がかかります。
固定資産税は誰が払うのかと言うと、「毎年1月1日時点の登記簿で所有者として記載されている人」です。つまり、年の途中で不動産を売却した場合は、売り主が1年分の固定資産税を負担することになります。
しかし、
売り主(あなた)の方からすると、その年の途中で手放した不動産についての固定資産税を、すべて負担するのは納得がいかないですよね?
そこで、不動産取引の慣行として、年の途中で不動産の売買が行われた場合には、売買をした日から12月31日までの日数に相当する固定資産税額を、買い主が売り主(あなた)に支払うことになっています。
あなたは、その金額(数万~数十万円)を手にすることになりますよね? それは「利益」として扱われてしまいます。
そのため、譲渡対価(売却価格)には、買い主が、売り主(あなた)に支払った固定資産税の金額をプラスして計算する必要があります。
これを「固定資産税精算額」と言います。図にすると以下の通りです↓
「固定資産税精算額」の一例
年間の固定資産税が120,000円で、9月30日に売り主(あなた)が不動産を売却した場合…
10月1日から12月31日までの固定資産額に相当する30,000円(年間12万円の三ヶ月分)を、買い主が、売り主(あなた)に支払います。
(2)取得費(買ったときの原価)は減価償却費などの控除も考慮する!
譲渡所得を計算する際には、譲渡対価だけではなく取得費(あなたが不動産を買った時の原価)にも注意が必要です。
これもまた「売り買いした時の価格のまま」で計算してはいけないのです。
不動産を売った時の利益を計算する際に譲渡対価から差し引く取得費(買ったときの原価)には、購入対価(そもそもの原価)のほか、購入時に支払った仲介手数料や登記費用などの諸経費も含めることができます。(購入対価に諸経費を加えた購入するために要した合計金額を「取得価額」といいます)
建物については、この取得価額がそのまま取得費になるわけではありません。
買ってから売るまでの間に、建物の価値が下がった分を差し引く必要があります。これを「減価償却費」と言います。
不動産を売った時の利益は譲渡対価から取得費を差し引きます。
この取得費は取得価額(買うのに支払った総額)から減価償却費を差し引いたものです。
利益を計算する上で差し引く取得費の計算上減価償却費が差し引かれるので、結果的に減価償却費分だけ利益は多くなることになります。
「利益」の扱いなんだ?? 納得いかん…
この理由は、ひとまず経年劣化分は不動産を売らなくても勝手に発生するものだから、売ることで生じる利益の計算上原価として差し引くことはできないと理解してください。
減価償却があるため、税金は想像以上に大きくなりがち
先ほど説明したように、取得費を計算する場合は、取得原価(買うのに支払った総額)から、買ってから売るまでの間の減価償却費の累計金額を差し引く必要があります。
ですので建物については、仮に、買うのに掛かった総額と同じ価格で売れた場合、一見、利益などないようですが、実際には買ってから売るまでの減価償却費の累計額分だけ儲かったことになってしまうのです。
なお、建物については経年劣化をするので減価償却費を差し引く必要がありますが、土地については経年劣化しないので、譲渡対価から差し引く取得費(買った時の原価)は取得価額(買うのに支払った総額)のままとなります。
不動産売却の場合「売った時の価格 – 買った時の価格」で考えているよりも、税金額は大きくなりがちなので注意してください。
マイホームと賃貸に出している物件とでは、価値の目減り具合が異なる
不動産売却をする際に、マイホームの場合と、賃貸に出している物件の場合とでは、価値が減ったとして控除される額が異なります。マイホームのほうが価値の目減り分は少ないです。
マイホームの場合は、減価償却費ではなく「減価の額」と呼び、賃貸(業務)用の建物の法定耐用年数(法律で定めた使用可能年数)を1.5倍にした年数に応じた額を取得価額から控除します。
※1.5倍するのは、非業務用なので業務用よりは減耗するのが遅いという理由のようです。
計算出来ないんだな!
では、「譲渡所得」に課せられる税金とは?
不動産を売却したときの利益である譲渡所得には、所得税(国税)と住民税(地方税)が課税されます。さらに、平成25年から平成49年までは復興特別所得税が上乗せされます。
譲渡所得の計算ができたら、あとは税率をかけるだけです。
税率は、売却する不動産の所有期間によって変わってきます。
不動産の譲渡所得に 対する税率 | 短期譲渡(5年以内) | 長期譲渡(5年超) |
---|---|---|
所得税率 | 30% | 15% |
住民税率 | 9% | 5% |
復興特別所得税率 | 0.63% (30%☓2.1%) | 0.315% (15%☓2.1%) |
合計 | 39.63% | 20.315% |
所有期間5年が税率の切り替えポイントです。ただし、不動産所有期間の判定は単純に所有している日数ではありません。
「不動産を取得して、5、6年くらい」という場合は、計算するときに注意が必要です。くわしくは『税率に大きく関わる「短期譲渡」と「長期譲渡」』にて確認してください
所得税(国税)の計算式
所得税は、譲渡所得×所得税率で計算します。
<所得税率>
・売却する不動産の所有期間が5年以内の場合:30%
・売却する不動産の所有期間が5年超の場合 :15%
住民税(地方税)の計算式
住民税は、譲渡所得×住民税率で計算します。
<住民税率>
・売却する不動産の所有期間が5年以内の場合:9%
・売却する不動産の所有期間が5年超の場合 :5%
復興特別所得税(平成25年〜平成49年)の計算式
復興特別所得税は、譲渡所得×所得税率×2.1% で計算します。
<復興特別所得税率>
・売却する不動産の所有期間が5年以内の場合:0.630%
・売却する不動産の所有期間が5年超の場合 :0.315%
税率に大きく関わる「短期譲渡」と「長期譲渡」
不動産所有が5年以内であれば「短期譲渡」、5年超であれば「長期譲渡」と呼ばれます。短期譲渡のほうが税率が高く、その差は2倍近くにもなります。
不動産売却に掛かる税金の計算式
不動産を売却した時にかかる税金額
=不動産を売った時の儲け(譲渡所得)×39.63%
【長期譲渡:不動産の所有期間が5年超】
不動産を売却した時にかかる税金額
=不動産を売った時の儲け(譲渡所得)×20.315%
ただし、所有期間の判定は、単にその所有していた日数を確認すれば良いわけではありません。
不動産の所有期間は、原則「購入して引き渡しを受けた日から、売って引き渡しをした年の1月1日」で見ます。
例えば、平成23年8月1日に取得した不動産を平成28年9月1日に譲渡したとしましょう。
単純に日数だけを見ると丸5年が経過しているように思えます。
しかし、譲渡した日については、その譲渡をした年の1月1日で判断します。つまりこの場合は平成28年1月1日で判断をするため、5年以内の「短期譲渡」となるのです。
ちなみに、「契約をした日」を「譲渡した日」とすることも認められています。「契約した日」を「譲渡した日」にすると、税金を安くできる場合があります。
では、実際に計算してみましょう!
それでは、ここからは具体的な事例を使って実際に計算してみましょう。
売却する不動産のスペック
・木造・新築の一戸建てのマイホーム
・建物の購入金額は2000万円
・土地の購入金額は3000万円
・合計の購入金額は5000万円
・購入諸経費は200万円 (仲介手数料、登記費用、印紙代他)
<売却時の情報>
・購入してから15年後の4月30日に4500万円で売却
・譲渡費用は160万円(仲介手数料、印紙代他)
・減価の額はおよそ840万円(2000万円☓2.8%☓15年)
・固定資産税は年間12万円
※マイホームを譲渡した時の特例については考慮しておりません
不動産の所有期間は5年を超えているので、売却した時にかかる税金計算には、下記の計算式を利用します。
=不動産を売った時の儲け(譲渡所得)×20.315%
譲渡所得 = 譲渡対価 – (取得費 + 譲渡費用) でしたね。
税金計算に必要な要素を、順に計算していきます。
譲渡対価
譲渡対価は物件売却価格+固定資産税精算額です。
売り主が不動産の所有者であるのは4月30日までなので、それ以降12月31日までにかかる固定資産税を買い主から受け取ります。
固定資産税は年間12万円なので、5月1日〜12月31日までの8ヶ月分(8万円)の固定資産税精算額は8万円です。
(物件売却価格) 4500万円
(固定資産税精算額) 8万円
合計 4508万円
取得費
取得費は購入対価+購入時の諸経費-減価の額(減価償却費)です。
(購入対価) 5000万円
(購入諸経費) 200万円
▲ (減価の額) 840万円
合計 4360万円
譲渡費用
今回の売却にかかった譲渡費用は160万円でした。この譲渡費用は仲介手数料や契約書の印紙代などを含めた実費で計算してください。
ちなみに、譲渡費用でいちばんかかるのは仲介手数料です。
400万円以上の物件の場合の仲介手数料は、下記の計算式で求められます。
譲渡所得
譲渡所得は、譲渡対価 – (取得費 + 譲渡費用)で計算します。
(譲渡対価) 4608万円
▲ (取得費) 4360万円
▲ (譲渡費用) 160万円
合計 88万円
【結果】不動産を売却した時にかかる税金額
今回は5年を超える所有期間だったので長期譲渡です。
その場合、不動産を売却した時にかかる税金額は、譲渡所得×20.315%です。
(譲渡所得) 88万円 × 20.315% = 約17万8000円
実際にはマイホーム売却には様々な特例があるため、
多くの場合で、こちらの試算よりも税金が安くなります。
CHECK 自宅売却時の税金の優遇措置と買い換え特例について【徹底解説】
減価償却率や税率が変わったり、
ある程度の利益までは税金が免除されることもあります。
税金のルールは毎年のように変更される上にあまりに複雑なので、本当はこれより
もっと大変な計算をしないといけません。
ですので、
あくまでシミュレーターは目安として使用してくださいね。
この記事のまとめ
・かかる税金は、所得税と住民税と復興特別所得税
(復興特別所得税は平成25年〜平成49年)
・税金は確定申告をして納める
(確定申告期間:2月16日~3月15日)・短期譲渡(不動産の所有期間5年以内)と
長期譲渡(不動産の所有期間5年超)で税率が異なる
【不動産の所有期間5年以内で売却した時の税金額】
不動産を売った時の儲け(譲渡所得)×39.63%
【不動産の所有期間5年超で売却した時の税金額】
不動産を売った時の儲け(譲渡所得)×20.315%
・譲渡所得 = 譲渡対価 – (取得費 + 譲渡費用)で計算する
・譲渡対価(売ったときの価格)に
「固定資産税精算額」を入れるのを忘れずに!
・取得費(買ったときの原価)は取得価額(買うのに支払っ
た総額)から減価償却費を差し引く
・不動産売却の税金の計算をするにはシミュレーターが便利
いかがだったでしょうか。
状況によって支払う税金が変わるということが分かっていただけたかと思います。
やっぱり簡単! 自動シミュレーター
ここまで解説したとおり、不動産売却時の税金の計算はかなり複雑です。
なので、無理せずにシミュレーターを使いましょう。これなら細かい計算も知識もいらないので簡単!ご自身の条件にあてはめて計算してみてくださいね!
以下の入力フォームにご入力いただいたデータに基づき税金額をシミュレートします。