不動産を所有していると毎年、固定資産税という税金を納めなくてはなりません。
この固定資産税は、土地・家屋ともに人が住んでいる住宅についてはその負担が軽減されています。しかし、住宅が建っていたとして、長期間誰も住んでいないとそれらの軽減が受けられなくなるのです。
あまり使わない空き家に多額の固定資産税が掛かるのであれば、いっそのこと処分を検討したいですよね?
そこで、このページでは…
・そもそも固定資産税はどれくらいの金額になるのか?
・住宅として利用される不動産はどれだけ優遇されているのか?
・空き家の場合、どれくらい固定資産税は増えるのか?
・どうなると空き家だと見なされるのか?
・その空き家を処分するとどれくらい税金が掛かるのか?
などなど、固定資産税の金額の決まり方と、最新の「空き家対策特別措置法」を紹介しながらくわしく説明いたします。
目次
空き家になると固定資産税はどうなる?
固定資産税はどうやって計算するのか?
土地や家屋など固定資産には、毎年1月1日の時点の所有者に対して「固定資産税」という税金が掛かります。
固定資産税の計算は、その不動産の評価額である「課税標準」に、ある一定の税率を掛けることで計算できます。
課税標準というのはそれぞれの自治体が定めるため、その計算根拠を知ることはできませんが、土地については、いわゆる自由な取引で成立する時価ともいえる「公示地価」の70%程度、家屋については新築の場合で、実際の建築価格の60~50%程度になることが多いようです。
課税標準に掛ける税率は、自治体により若干異なることもありますが、ほとんどの市区町村が1.4%の税率を採用しています。
さらに、この固定資産税に加えて、都市部では開発の進んだ「市街化区域内」の不動産の所有者に対して、「都市計画税」という税金が別途かかります。課税される対象者や税額の計算方法などは固定資産税とほぼ同じで、その税率は最大で0.3%です。
要するに、市街化区域内の不動産を所有していると、本来は、役所が決めた課税標準に、税率1.7%(1.4%+都市計画税0.3%)の固定資産税が掛かるということです。
住宅用だと固定資産税は大幅に軽減されている
毎年課税されるとなると負担の大きい固定資産税ですが、「一定の要件」を満たす住宅については、大幅な軽減措置があります。
ここでいう住宅とは、決して自分が住むマイホームということではなく、その家の構造が住宅用であるということです。
ですから、自分が居住するものだけでなく賃貸されるものにも軽減措置は適用されるのです。
住宅用家屋についての軽減措置
新築の住宅については、居住用部分の床面積が120平米までに相当する部分に限り3年間固定資産税が1/2に軽減されます。
さらに、3階建以上の耐火構造・準耐火構造の住宅であればその軽減期間は5年間に延長されます。
住宅用地についての軽減措置
一定の住宅用地については、下記のように課税標準額が減額されます。
固定資産税額は「課税標準額 × 税率」ですから、課税標準が減額されるとそのぶん固定資産税額も軽減されることになるのです。
固定資産税:課税標準額 × 1/6
都市計画税:課税標準額 × 1/3
②200㎡を超えた部分(一般住宅用地)
固定資産税:課税標準額 × 1/3
都市計画税:課税標準額 × ⅔
※ ここでいう200㎡というのは、一戸当たりに認められたものであるため、アパートなどの集合住宅の場合、200㎡に住宅戸数を掛けた面積までが小規模住宅用地とされます。
なお、これらの軽減措置の対象となる住宅用地の面積は、家屋の総床面積の10倍までが限度となります。
都心周辺の住宅地では戸建てだと100㎡前後の敷地の住宅も多く、「小規模住宅用地」と言っても200㎡は十分な広さです。
つまり、都心周辺の大半の住宅については、固定資産税は、通常の1/6の課税に軽減されていると言っても良いでしょう。
たとえば、固定資産税の課税標準額が2000万円で100㎡だとすれば、本来の固定資産税(都市計画税を含む)は約34万円(2000万円☓1.7%)となります。
それが、住宅用地の軽減措置を受けると
都市計画税:2000万円☓0.3%☓1/3=約20,000円
固定資産税等は約6.7万円(4.7万円+2万円)にまで減額されるということです。
特定空き家になると固定資産税は6倍に
「住宅用地に固定資産税の軽減措置が適用される」ということは、未利用だったり青空駐車場のようないわゆる「更地(さらち)」のままの土地があれば、住宅を建設することでその敷地に対する固定資産税が大幅に減額されるということになります。
そして、もし住宅を取り壊せば、固定資産税の負担が上がる可能性があるということです。
特に200㎡以下の小規模な住宅用地であれば、固定資産税が一気に6倍になってしまうということもありえます。
ところが!
最近、不動産について問題になってきていることがあります。
それがまさに「空き家」問題です。
「少子化」と「都心志向」の高まりから、特に地方については空き家が目立つようになってきています。
総務省統計局の統計をみると、空き家の数は平成5年には448万戸だったものが平成25年には820万戸と、20年間で約1.8倍にも増加しています。
全体の家屋についてどれくらい空室があるのかを示す「空室率」についても、平成10年に11.5%となり、平成25年には13.5%と一貫して上昇をしているのです。
CHECK 空き家数および空き家率の推移(統計局)
いいえ、それがそうでもないんです。
では、なぜ空き家が増えると問題なのでしょうか?
まず第一に、空き家は震災があったときに倒壊し周辺住民の避難の妨げになりかねないんです。
さらに、雑草や悪臭により住環境や景観が悪化したり、粗大ごみが不法投棄された上に放火されるなど、治安の悪化につながることが懸念されています。
すでに都心に引っ越している人にとってみれば、誰も住まなくなった地方の実家は、もらったところで財産どころか、どうにも使いみちもありません。
親の遺品の後片付けに多額な費用をかけたところで、使いみちもないということになれば、そのままに空き家にしておくという人も多いでしょう。
それでも、周囲に迷惑を掛けないようにと、わざわざ解体費用を掛けて更地にすると、今度は固定資産税等が住宅用地の軽減措置を受けられなくなってしまうとなれば、誰も取り壊しなどしません。これでは、空き家が増え続けていくのも当然です。
だからといって、仮に朽ち果てたような空き家とは言え、個人の所有物であることは間違いなく、行政が勝手に処分をすることも、もちろんできないですよね。
そこで、平成28年5月に施行された「空き家対策特別措置法」により、空き家の中でも特に危険度の高いものを「特定空き家」として、もしその所有者が管理方法を改善していないと判断されれば、行政から除却を含めた厳しい指導をされることになりました。
そして、できるだけ空き家として放置されることのないよう、固定資産税についても「住宅用地の軽減措置」の適用ができないこととされたのです。
つまり、解体をして更地にしなくても、空き家にして長期間放置しておくと固定資産税の負担が一気に上がるかもしれないということです。
空き家は、時間の経過により価値が下がることはあっても上がることはまずありません。つまり、処分を先送りするほど売りにくくなり、売れても売却金額も小さくなっていくということです。
その上、「特定空き家」とされると、持っているだけで毎年多額の固定資産税の納付しなければならないとなれば、いっそのこと、空き家は売れるうちにと早めに売却をしてしまったほうが良いということにもなるはず。
それが、この法律の狙いなのです。
空き家を処分すると税金はどれくらい掛かるの?
居住用不動産3000万円控除とは?
不動産を売ったことによる利益(譲渡所得といいます)は、売った時の価格(譲渡対価)から買った時の原価(取得費)と売るのに掛かった諸経費(譲渡費用)を差し引いた金額です。
つまり、
となります。
空き家になるような住宅の場合、だいぶ昔に取得されたものが多いもの。そうなるとその住宅を買った時の原価である取得費がわからないこともあるでしょう。
そんなときには、売った時の価格の5%を取得費としてもよいという「概算取得費5%ルール」があります。
つまり、不動産の譲渡所得は売った時の価格(譲渡対価)から買った時の原価(取得費)を差し引くのですから(譲渡費用があればそれも差し引きます)、売ったときの価格(譲渡対価)の95%(100%-5%)が譲渡所得になるということです。
たとえば、不動産を4000万円で売った場合…
譲渡所得: 4000万円 - 200万円 = 3800万円
となり、3800万円に税金がかかるのです。
そうなんです。
でも、マイホームを売却するというのは、新たに自宅を購入するとか、ローンの返済が大変だとかで、なんらかのお金が必要となったためという場合が多いもの。
そもそもお金が必要なときに、多額の税金を課せられると、売る側としては相当困りますよね。
そこで、一定の要件を満たすマイホームを譲渡した場合には、譲渡所得から3000万円を差し引くことができるという軽減措置があるのです。
この軽減措置を用いれば、かなり税負担は軽減されるか、税負担がなくなることも多いはずです。
しかし、この規定はあくまでも「居住用不動産」が対象です。
つまり、自分が生活の拠点として住んでいた家を手放した時に適用がされるものであり、既に空き家になっていた不動産には適用がされません。
では、これから本人が介護施設などに入所するので居住用ではなくなる物件であればどうでしょうか。
結論から言えば、「居住用不動産の3000万円特別控除」は適用することができます。
「以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること」でこの特別控除は受けられると定められているのです。
逆に言えば、施設に入所し空き家になってから3年目の年の12月31日を過ぎてから譲渡した場合、この「3000万円特別控除」は適用できないことになります。
介護施設に入居するにしても、いつでも戻れるよう自宅は残しておきたいという方もいらっしゃるでしょうが、長期間空き家であるとみなされたのちに譲渡をすると、そのときの譲渡所得税が増えるということは頭に入れておいてください。
空き家の3000万円特別控除
さらにくわしく知りたい方へ。税金算出の考え方
居住用不動産の3000万円の特別控除を受けられるのは、本人の生活の拠点となっている不動産であることが条件です。
しかし、空き家の処分を進めるため、一定の要件を満たす空き家を相続して、その空き家を譲渡した場合も譲渡所得から3000万円の控除ができる「空き家の3000万円特別控除」が、平成28年に創設されました。
対象となる不動産は、ザックリというと
旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)で建設された一戸建ての家屋と、その敷地で亡くなった人(被相続人といいます)が居住していたものであることです。
対象を「旧耐震基準の家屋」としたのは、災害時に倒壊をして避難の妨げとなる可能性が高いからです。
その不動産を相続開始から3年以内に、一度も賃貸することなく、耐震改修するか取り壊して更地にして売った場合には、この「空き家の3000万円特別控除」が適用されます。
「空き家の3000万円特別控除」の主な適用要件
・被相続人が居住していた家屋とその敷地を相続した人
【対象資産】
・被相続人の居住用の家屋とその敷地で、相続から売るまで事業の用、貸付の用、居住の用に利用されたことのないもの
・旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)で建築された一戸建てであるもの
・相続開始直前に被相続人以外に誰も住んでいなかったもの
【譲渡要件】
・相続開始日から3年を経過する日までの12月31日までの間に譲渡されたもので…
・耐震リフォームをするか、取り壊して更地にした場合
・譲渡対価が1億円以下である場合
とはいっても、旧耐震基準という築35年以上の家屋をわざわざ耐震改修して、その金額以上に売値が上がる可能性はあまりないはずです。
ですから、この軽減措置を利用しようというのであれば、多くの場合には取り壊して更地にした上で譲渡をすることになるでしょう。
いずれにしても、空き家は持っているだけで、自分で雑草を除草したり掃除をしたりに行くための交通費や誰かに管理を依頼すれば管理費も掛かります。
それが、長期間空き家であり「特定空き家」であるとされると、固定資産税が一気に6倍にも増加する可能性もあります。
その上、空き家を放置していたことで、その空き家が放火されたり倒壊するなどして近隣住民に迷惑を掛けるというリスクもあるのです。
それであれば、解体や片付けに費用がかかるとしても、補助が受けられる場合もありますし、税法の軽減措置が適用されるうちに思い切って売却をするということも、将来の損失を減らす有力な選択肢になるのではないでしょうか。
さらにくわしく知りたい方は ↓ 国税庁のホームページもご覧ください。
CHECK マイホームを売った時の特例(国税庁)
CHECK 空き家にしていたマイホームを売った時(国税庁)
CHECK 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の創設(国税庁)
空き家売却一括見積もりフォーム
「今、空き家を売却したら、いくらで売れるのか?」
以下の入力フォームにご入力いただければ、正確な見積もりがわかります。
この記事のまとめ
・住宅を解体し更地にすることで固定資産税等が大幅アップすることも
・空き家にしてから3年を経過した日の12月31日までに譲渡をすれば、居住用不動産の3000万円控除の適用の余地あり
・旧耐震基準で建てられた一戸建ての空き家を相続した場合、解体して更地にし、相続開始から3年以内に譲渡をすれば、譲渡所得から3000万円の特別控除の適用も
・空き家は持っているだけで負担も増え、トラブルに巻き込まれるリスクもあるので、税法の恩典が使えるうちの譲渡の検討も